
江戸時代当時の人々が手に取った物と同じ、摺りたての「復刻版浮世絵」ならではの色の鮮やかさと風合い。
それがどのように作られているか、江戸時代からの職人技を引き継ぐ現代の名工の仕事をご紹介します。


彫師の仕上げた神業の版木に、色の息吹を吹き込む「摺り」。江戸時代と同じ天然顔料、そして人間国宝の紡ぎだす越前奉書和紙を使用。主版から画の中心となる墨線を摺り、複数の色版を一枚一枚寸分のずれもなく塗り重ねます。顔料の量や水分を調整し、微妙な摺り加減で表現する「ぼかし」、顔料を一切つけずに力強く摺り込み凹凸を出す「空摺(からずり)」など、さまざまな技法を使い、鮮やかな作品が仕上がります。現代の印刷技術にはない独特の風合いは、伝統木版画ならではの豊かさです。
摺師の手となる刷毛
版木のうえに絵具をのせ、刷り上げる時に使う。大きさは数種類あり、絵具をつける部分によって使い分けます。絶妙な作風に仕上げる「ぼかし」の表現は、摺師の技術とともに刷毛の調整も大切なことです。
版木のうえに絵具をのせ、刷り上げる時に使う。大きさは数種類あり、絵具をつける部分によって使い分けます。絶妙な作風に仕上げる「ぼかし」の表現は、摺師の技術とともに刷毛の調整も大切なことです。
安定した色彩にする、とき棒↑
彫り上がった版木に絵具を運びます。
摺師の手により、絵師と彫師の思いを摺り上げる馬連↑
版木にのせた絵具をきめ細かく和紙に写し込む。馬連は、数十枚の和紙を貼り合わせて浅い皿状にした当皮(あてがわ)と、竹皮を細く裂いて螺旋状に編み上げた縄と、これらを包む竹皮で作られています。
人間国宝が漉いた和紙
彫師と摺師の技術を写し出す和紙は、人間国宝、岩野市兵衛氏が一枚一枚を手で漉いた越前生漉き奉書を使います。楮(こうぞ)100%で作られた和紙は、混ぜ物がなく、繰り返して版を重ねる過酷な使用に耐えうるしなやかさが
あります。絵具の発色も良く、独特の柔らかさ、そして温かみのある風合いを生み出します。