美人画の巨匠、
喜多川歌磨の「風流七小町 花のいろは」に
フューチャーしてみたいと思います。
ちょっと気怠そうな雰囲気を醸し出した美女がひとり。
たばこをふかしながら、
なにやら書物を読んでいる作品ですが、
着物と長襦袢、それぞれの柄に
せつない女心が描写されていたのです。
着物の襟元や裾に描かれているのは
秋の紅葉と枯れ葉…。
ところが、その下に着ている長襦袢の柄は
燃えるような紅色に桜の花びら模様…。
心のなかは、春のような華やかさを抱きながらも
外見は少しずつ老いて秋色になってしまう、というせつない女心。
美女の髪のそばに小野小町の
あの有名な和歌が記されています。
小町晩年、人生を振り返って詠んだ歌といわれています。
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
桜の花が春の長雨に散ってゆくように、
私の美しさも儚く色褪せてしまったわ
という気持ちでしょうか。
しかし、この美女、読書家だと思いませんか?
歌磨はここにどんな意味を投影したのでしょう。
勝手な推測ですけれど、
外見だけではなく、
内側も磨こうと向上心の高い美女なのでは。
また逆説的にいえば、
外見は老いても、心や考え方は頑なにならず、
いつまでも若々しくある、と見ることができますよね。
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