歌麿さんの描く女性って
みんな魅力的。
さぁ今回はどんな美人が登場でしょう!
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喜多川歌麿の「教訓親の目鑑」(きょうくんおやのめがね)は、
こんな娘にならないようにちゃんと教育しなさいよ、
と女の子をお持ちの親御さんに向けた
教訓になっているシリーズ物です。
大酒のみの酔っ払いやぐうたらな娘など、
10人のダメな娘さんが出てきます。
(前回の「理口者」も読んでね)
絵の脇に倫理的な御託が結構な分量で添えられていますが、
真の目的は親のお眼鏡にかなわぬような
市井の若い娘の奔放な姿を
描きたかっただけではないでしょうか。
教訓絵にかこつけた美人画なら、
おとがめなしで堂々と描けますものね。
そう思ってしまうくらい、
ダメな娘さんたちは可愛らしくて憎めません。
例えば「ばくれん」。
「獏連」と書いて、
意味は「すれっからし」「あばずれ」「おてんば」。
片手にはワタリガニを丸ごと一匹、むんずとわし掴み。
片手で酒の入ったグラスを豪快にあおります。
胸元ははだけ、二の腕も露わに腕まくり、
酒の銘柄の入った男物のような着物を着た姿は、
あばずれは言い過ぎにしても確かに少し、
はしたない感じです。
そんな獏連女も歌麿が描くと、
さっぱりとした健康的なお色気を
感じさせてしまうところはさすがです。
気取らない獏連ちゃんとなら、
こちらも気を遣わず楽しく飲めそうです。
おつまみのワタリガニは江戸前では
昔はたくさん捕れたそうで、
浮世絵にもよく宴会のシーンなどで
大皿に山盛りで描かれています。
お酒はギヤマンの洒落たグラスに入っていますが、
おそらく日本酒でしょう。
灘のお酒が江戸でも大人気で、
新酒が出た時などは酒専用の樽廻船が大阪と江戸の間を
いつもは20日くらいかかるところを5日で運んだそうです。
今で言うボジョレーヌーボー解禁みたいな騒ぎで、
酒屋同士の番船競争があったといいます。
大食い大会や大酒飲み大会も
庶民の娯楽としてあったそうで、
江戸時代の江戸ってとても平和で豊かだったのですね。
飛脚問屋の主の還暦祝いに千住で行われた「酒合戦」の様子を
蔦重のお友達の大田南畝(おおたなんぼ)が記録していましたよ。
最多記録はなんと7.5升も飲んだ男!
しかし審査員の選んだ優勝者は6.2升飲んで、
明日早いのでこれにてごめん、と去っていった旅の人。
いくら飲んでも乱れることなく、
去り際がかっこよかったから、ですって。
女性の参加者も何人かいらして、
2.5升だ1.5升だと結構な飲みっぷりだったそう。
おつまみにはウズラの焼き鳥やカラスミ、
やっぱりカニもありました。
それにしても日本酒をそんなに大量に飲んで、
大丈夫だったのでしょうか。
今と違って江戸時代の日本酒は税金対策もあって、
問屋から小売りに行く間に水を足して、すっごく薄めていたのです。
ですから同じ量を今のお酒で飲んだりしたら、もちろんダメです。
良い子はマネしないように。
「ばくれん」って呼ばれちゃいますよ。
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次回も
『アート大好きカエル女史がナビする
カナブン流、歌麿美人画の旅』お楽しみにね!