金沢文庫 | 復刻版浮世絵木版画専門店
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本を読むひまがあったら針仕事でも覚えなさいって、そりゃ手厳しい!

暑いの?

寒いの?

なんだかよくわからない天候ですね。

みなさま、お風邪など引いてはいませんか?

雨降りが続くこんな日は

浮世絵談義といきましょう。

さぁ

『アート大好きカエル女史がナビする
カナブン流、歌麿美人画の旅』へ!

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喜多川歌麿の「教訓親の目鑑」(きょうくんおやのめがね)
シリーズから「理口者」です。
このシリーズは、親のお眼鏡にかなわない
ダメな娘さんのダメっぷりを可愛く描いたものです。

「理口者」?
字が違いますが「利口者」のことのようですから、
ダメじゃないように思います。
読書家の利発そうな娘さんのどこが気に入らないのでしょう。

おそらくは読んでいる本が「絵本太閤記」という
秀吉公の立身出世の物語であることと、
寝ながら本を読むというお行儀の問題かと思われます。

絵の中に書かれた文章を読むとわかりますよ。

はじめに「巴女の武勇は女の勇にあらず」
源平合戦の女武者をあげて、
「巴御前(ともえごぜん)はかっこいいけど、
女のやることじゃないよね」とチクリ。

次に伊勢物語の筒井筒の和歌を引用。
「風ふかば沖津白波たつた山 夜半にや君がひとり越ゆらむ」
他の女のもとへ向かう恋人の道中を
それと知りながら嫉妬もせずに心配するという健気な女心。
独り琴を鳴らしながら詠む歌を
物陰から聞いていたその男が
心を打たれて浮気をやめる、という話です。
この貞女の鏡のような人にさえ、
「小難しい和歌や琴なんか器用に出来ても、
針仕事のひとつも出来なきゃしょうがない。
この女一見賢そうに見えるけど、
やり過ぎで嫌な感じ。」とか言っています。

どこまでもひねくれた歌麿さんです。

女が可愛げのない軍記物なんか読むもんじゃありません。
本を読むひまがあったら針仕事でも覚えなさい。
なんですか、寝っ転がって、だらしない。
といったところでしょうか。

寺子屋が普及し、世界的に見ても識字率が高かった
当時の江戸にあっても、女に学があるのは
生意気だという風潮はあったようで
「理口者」は見事「親の目鑑」ベストテン入りです。

ちなみに、この娘さんの読んでいる
「絵本太閤記」は大阪から入ってきたベストセラー小説です。
「親の目鑑」シリーズ刊行の2年後、
歌麿はこの読本に題を取った3枚揃いの武者絵
「太閤洛東五妻遊覧」(たいこうらくとうごさいゆうらん)を発表します。
いつものくせで、秀吉の5人の妻はまるで遊女のよう、
石田三成を若衆のように描いたのがまずかったのか、
これが咎められ入牢と手鎖の罰を受けてしまいました。

それを知って「理口者」を見ると、何やら感慨深いものもあります。

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次回もどうぞお楽しみに!