街を彩る落ち葉の黄金色やハロウィンのカボチャ色は
食欲を刺激するのでしょうか、
実りの秋、食欲の秋がやってきましたね!
さて、こちらは梅のつぼみが膨らんだ
春の景色ではありますが、
「東海道五十三次」のなかで
意外や意外、
唯一、食事の風景が描かれている作品「丸子」なのです。
障子に「御茶漬」と「酒さかな」と書かれ、
屋根に届く大きな立て看板には
「名ぶつとろろ汁」と書かれています。
店の中には串刺しの焼き魚や、軒には干し柿も見えます。
ここは丸子の名物茶店。
縁台に背中を丸めた旅人がふたり。
十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の主人公、
弥次さん喜多さんを彷彿しますね。
ただ、残念ながら
小説のなかの弥次さん喜多さんは
この店の店主と女房のケンカのせいで
名物とろろ汁を口にできませんでした。
かわいそうに!
正面の男は、今まさにあんぐりと大きく口を開け
とろろ汁をズズズとかけこむところ、
背中をむけた男はお酒を呑んでいるのでしょう。
右手に杯を持っています。
背中に赤ちゃんを背負った女房が
皿にのせて持ってきたのは何でしょうか、
ちょうど看板に隠れて見えませんね。
視線を左にむけると
長い棒に蓑(みの)と菅笠(すげかさ)を差して
肩にかけ、のんびりと歩く農夫の姿。
美味しいとろろ汁を食べ終わり、歩き出したところでしょうか。全体的に見ると
画面のほぼ半分を農夫中心に見ることもできます。
茶店で食べる旅人を主人公に見せるなら、
もっとふたりをクローズアップもできたのに
こうして見せる意図は何でしょう?
答えは広重本人(!)に聞かないとわかりませんが、
のんびりと歩く農夫の姿から、
まだまだ旅は続くよ、と
作品の広がりを感じるような気がします。
皆さんはいかがでしょうか?
それにしても、
なんて平和でのどかな風景。
この作品を見ているとユルユルとリラックスしていくのは
私だけではないと思います〜。
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