金沢文庫 | 復刻版浮世絵木版画専門店
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歌声や笑い声が聞こえてきそうな茶摘み風景 

みなさま、ご無沙汰しております!

お元気でいらっしゃいますか!?

間が空いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

また浮世絵ブログをジワジワと

発信してまいりますので、

どうぞ、どうぞ、よろしくお願いいたします。

さて、もうすぐ新茶の美味しい季節ですね。

そこで、こちらです!

葛飾北斎 富嶽三十六景「駿州片倉茶園ノ不二」

駿州とは駿河の国、今の静岡県東部のことです。
静岡と言えばお茶ですね。

かまぼこ型のグリーン一色のお茶の木が、
何列も整然と連なって日当りのいい山の斜面を
覆っている光景が目に浮かびます。
その後ろには雪化粧をした富士の山、
反対側には穏やかで広大な太平洋の水平線。
いやー静岡っていい所ですよね。

でも北斎の富嶽三十六景の
「駿州片倉茶園ノ不二」は何だか変。
私、カエルのイメージするお茶園と違います。

藪みたいな畑の前で、大勢の女性が一列に並んでいます。

立っているグループと

椅子に腰かけているグループ。

奥の畑にも同様のグループがいます。

周りにはカゴいっぱいになった
お茶の葉らしきものを天秤で運ぶ人、
馬で藁葺の建物の方へ運ぶ人。
建物の周囲には藁の山が積んであります。

これが江戸時代の茶園風景なのですね。
当たり前だけど、今と全然印象が違う。

恐らく建物の中では、
藁を燃料にして収穫したお茶の葉を
加工しているのでしょう。
摘んですぐ発酵を止めないと煎茶にならないので、
橋を嫌がる馬を無理矢理引っ張って急いでいます。

しかし、肝心のお茶畑が緑ではなく、
かまぼこ型もしていません。
これはどういう訳なのか?
カエルは調べてみました。

茶畑の見慣れない様子の秘密は、
どうやらお茶の収穫の仕方とお茶の品種にあるようです。

この絵は茶摘みをする様子を描いていますが、
今ではほとんどが機械でする作業です。
茶畑に機械を入れるために、機械の幅に合わせて畝を作り、
機械の刃で刈り取るために、刈り取った面が均一な
かまぼこ型や水平な面になるのです。
つまり、現在みられる茶畑は、
機械による効率的な収穫に適した形に
なっているという訳なのですね。

江戸時代にはお茶の木は一本ずつ、
手で摘みやすい高さに育てられていたようです。
今でも品評会などには手摘みのお茶が出品されるので、
それ用に昔ながらの畑を一部で作っている茶園もあるようですよ。

1メートルほどの高さに整える一本立ちの木は
「自然仕立て」というそうです。
機械用の畑のように木と木が密着していないので、
下の方にも日が当たり新芽がとれます。
ですので、収穫は椅子に座って下の方から摘んでゆくのです。

お茶畑がきれいに整った列でなく、
でこぼこの藪みたいな形なのは手摘み用の畑だから。
椅子に座ったグループの女性たちは、
休憩中ではなくお茶摘み中だったことがわかりました。

お茶畑が緑色をしていないのは、
恐らく現代とは違う品種のせいだろうと思われます。
今は日本のお茶の7割以上が「やぶきた」という
品種だそうですが、これがとっても鮮やかな緑色なのです。
実はこの品種は明治の末から広まったもので、
それまでは種から育てた在来種ばかりで、新芽の色なども様々でした。
黄緑色、萌黄色、黄金色など黄色みの強い品種も
多く緑が普通ではなかったのです。

なるほど、カエル的には「片倉茶園の秘密」が
スッキリ解決しました。
昔はこうだったのね、お茶畑。