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もしかして、北斎さん、またやってくれましたね!?

みなさん、今回も『ほぉ〜!』ってなもんですよ、きっと!!

アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅、
ぐんぐんエンジンかかってます。
あ、この時代にエンジンなんてありませんね、
馬力です、馬力!

カエルの馬力に乗っかって
江戸めぐり、さぁ行きましょう〜!

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はい、カエルです(๑❛ᴗ❛๑)


(北斎 富嶽三十六景「青山円座松」)

小山じゃあないのですね、一本の松の木なのですね。
三間、約5.5メートルも枝を広げていたそうです。
添え木の材がたくさん見えていますが、一体どうやって育てたのでしょう。

この大きな松は江戸の名所になっていて、
お花見ならぬ松見の参詣客もあったようですね。
桜と違って一年中が見頃な松は、宴会の口実にはうってつけだったのかも。

場所は青山の竜岩寺(現・龍厳寺)
この松はもう無いみたいですが、今も同じ場所にお寺があります。


おやおや、宴会で盛り上がっている旦那衆がいるのは、
勢揃坂(せいぞろいざか)と呼ばれる坂の途中でしょうか。
この古道もいまだ健在ですが、さすがに富士山は見えないかな。
珍しい立派な松と富士を肴に楽しそうですね。


坂道に音を上げて手拭いで引っ張ってもらっていた子も、
霞の向こうに顔を出した富士山に励まされて、もうひと頑張り。

賑やかな動きのある人物群は、この絵の右隅の前景部分に固められています。
大部分を占めるのは、うって変わって静謐な佇まい。

円蓋の松と三角の山の対比は例によって、
面白さ優先で大きさを揃えています。
突っ込み禁止のやつです。


松の奥、左手に見える竜岩寺の屋根と円座松の左の稜線が、
霞の横線で区切られて白い逆三角形を描いているのがお分かりですか。
これって、逆さ富士っぽいなぁ、と
「青山円座松」をぼんやり眺めていて気付いたのです。


さらにこれって、「甲州三坂水面」に似ていないですか?
逆さ富士のずれ具合も、右の小山と松の配置も、
左の斜面とお寺の屋根の傾斜も。
もしかして、またやってくれました? 北斎さん!


一方、ぼんやり眺めていては分からないのが、左下ににょっきり見えている足。
熊手で松葉を集めている人の足です。
「遊歴雑記」という江戸見聞録の竜岩寺の評価は、
「狭いけれど趣向が凝らされていて、掃除も隅々まで行き届いて、とってもキレイなお寺!」とのことです。

こうした影の努力があってこその名所なのですね。
ご苦労様です。

ちなみに、集めた松葉は捨てたりしませんよ、もったいない。
そこはリサイクル先進都市のお江戸です。
松葉や松ぼっくりにはテレピン油がたくさん含まれていて、よく燃えました。
風呂やかまどの焚き付けに、瓦など鋳物を焼く時や、塩を精製する時の燃料にも。
炭でいぶして、蚊取り線香にもなりましたよ。


松葉の描写が鬼のように細かい、彫師さんに脱帽の「青山円座松」。
ぼんやり眺めるもよし、じっくり観察するもよし、です。

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カエルの旅、次回もお楽しみに!