岩下書店 | 復刻版浮世絵木版画専門店
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北斎さんの遊び心? 坊主頭の小僧さんの寄り道発覚!!

秋なのに、春真っ盛りの作品をご紹介してしまいます!

ジワジワと人気上昇中、

『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』へ、ご一緒に!

今回のタイトル、坊主頭の小僧さんの寄り道は
最後の方で発覚してしまいますよ!

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江戸近郊のキングオブ行楽地といえば、ここ、品川です。
春は御殿山の桜、夏は潮干狩り、秋は海案寺の紅葉、
旧暦の一月と七月の二十六夜待には月見の船が出ました。

また、東海道の第一宿として関東以西の大名行列は、
江戸入りの支度を整えるために必ず立ち寄ったし、
大山詣りや富士講の送別会や精進落としの場でもありました。

宿屋が100軒近くあって、北の吉原、南の品川なんぞと呼ばれた、
ほとんど公認の大歓楽地としても賑わいました。
品川沖には毎日、大型商船が碇泊する、
陸海ともに江戸への玄関口として栄えていたのが品川の地でした。

さて、江戸時代の御殿山は桜の花が満開です。
まだ、ソメイヨシノはメジャーではなく、
桜と言えば野山に自生する山桜かエドヒガンという時代。今の桜とはだいぶ違って見えます。

( ↑ エドヒガン/画像 wikipediaより引用)

ヒョロヒョロと高く伸びた枝の先に、

小ぶりの花が白抜きのドットで描かれています。

淡いピンクの花を円形になるよう配置して、
中央の富士山を囲うという演出はさりげなくてオシャレ。

そこに集う人々の何とも平和で穏やかな様子は、
幕末から明治にかけての品川の歴史を知る現代のカエルとして、
複雑な気持ちにさえなってしまいます。

ペリー来航に備えて、お台場建設のため御殿山は削られ、
明治には鉄道を通すため山は真っ二つに。
そして、潮干狩りも出来た遠浅の海は埋め立てられて、
高層ビルが建ち並び、風光明媚な行楽地としての機能は
完全になくなってしまいました。

はっ! 感傷的になっている場合ではありません。
美しい江戸の時代を生きる人々を、観察しなければなりませんぞ。

左下に見える瓦屋根は、御殿山の南東のふもとに
集まっていた寺社の屋根でしょう。
そのさらに下の海岸沿いに東海道が通り、
品川宿が続いているのです。

左の小山に陣取る、緋毛氈(ひもうせん)を広げた一行は商家の旦那衆風。
漆塗りのお重の中に御馳走を詰めて、お酒を召しているご様子。
桜、海、富士山、いっぺんに見える特等席でほろ酔い気分。
羨ましいです。

下からも続々と人が登ってきます。

子連れの若夫婦の前には、脱いだ羽織を肩にかけ汗をぬぐう若旦那。

その前のお弁当を持ったお武家二人も、
扇子を広げて日差しをよけています。

日傘を差す人もいて、今よりもだいぶ大きなお山だった御殿山は、
街道から結構な登り坂だったのでしょう。

茶店の前には、姉さん被りに前帯の女将さん風の美女が、キセル片手に振り返る。
目線の先には、はしゃぐ坊主頭の小僧さん。

やや、このふくらはぎムキムキ小僧には見覚えが。
山に三つ巴の永寿堂の風呂敷包みを背負っているし。

君、たしか「五百らかん寺さざえ堂」にもいたよねぇ。
また、お使いの帰りに寄り道ですか、しょうがないなぁ〜

山の向こうの板塀の前を、旅人が歩いているのも見渡せます。
宿場町のすぐ隣の自然豊かな行楽地、江戸から日帰りで行ける品川御殿山のお花見。
みんな本当に楽しそうです。

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カエルの旅、次回もお楽しみに!