金沢文庫 | 復刻版浮世絵木版画専門店
■ 金沢文庫ブログはこちら!ほぼ毎日更新中。 ■

ささ、お江戸見学にまいりましょう

新緑がまばゆいGW真っ只中!
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

『復刻版浮世絵木版画・金沢文庫』も
心地よい日々を過ごしております。

さて、アート大好き青野カエル的解釈の
巨匠・北斎の『富嶽三十六景』シリーズの第2回目でございます。

見て清々しく、
読んで「へぇ〜なるほど〜」と頷ける楽しいコラム、
さぁさぁ、どうぞどうぞ一緒にお江戸見学にまいりましょう!

* * * * * * *

三井の越後屋、略して三越。


(葛飾北斎 富嶽三十六景「江都駿河町三井見世略図」

現在でもこの絵と同じ場所に日本橋三越本店があります。
右側の屋根の修理をしている辺りは、
三井本店の重厚な建物に変わり、現在では重要文化財になっています。

元々は日本橋の江戸本町一丁目の呉服屋が集まった町に
店を構えた越後屋でしたが、古株の同業者に追い出されるように、
隣町の金融街だった駿河町に移ったのだそうです。

なぜ同業者に嫌われたのかしら?


屋根看板に誇らしげに掲げる謳い文句、
「現金掛け値なし」がその理由だったようです。

当時の商売では当たり前だった代金後払いの「掛け売り」をやめ、
現金取引にすることで、金利手数料の分、代金を安くしました。
また、反物の「切り売り」や、
その場ですぐに着物に仕立ててくれる「仕立て売り」など
次々と新しいアイディアを実践し、
庶民にも買いやすい仕組みを商売に取り入れて行ったのです。

他にも、武家や商家などお得意さんの家に
見繕った品を持ち込むのが従来のやり方でしたが、
越後屋は「店前売り」(たなさきうり)といって、
野菜や魚のように店先に並べた品物の中から好みの物を選べるようにしました。
また店の中で紳士服、婦人服のように売り場を分けて、
専門スタッフによる接客販売をしました。

これって今のデパートと一緒ですよね!
そうなのです、三井越後屋はデパートの元祖だったのです!

すごいですね、デパートって欧米から来たものかと思っていたら、
なんと江戸時代から日本にあったのですね。

それはさておき、この「江都駿河町三井見世略図」ですが
富士山と左右の屋根と看板上の小さな屋根の三角形を
繰り返すリズムが心地よいですよね。
瓦の薄墨とわずかな緑色とベロ藍、
ワンポイントのトンビ凧の赤が江戸っ子好みの粋な色使いです。


例によって富士山に見立てられた屋根の上には、
まるで富士登山をしているかのような職人さんたちが配されています。
藁にくるんだ漆喰を放り投げた瞬間を切り取った絵に、
北斎の類まれなる画家の眼を感じます。
江戸で一番賑やかな日本橋、
中でも賑わったであろう駿河町通りの正月の買い物客をバッサリ外し、
大店の屋根と富士を仰ぎ見る視点はなんとも斬新。

富士よりも高く揚がる凧には、
三十六景の版元「西村永寿堂」へのオマージュかしら、
「寿」の文字が正月のおめでたい気分を盛り上げています。

日本橋界隈は今でも江戸時代の区割りがきれいに残っていて、
「三越」をはじめ、「にんべん」や「山本山」などの老舗も見つかる、
とても面白いところです。
日本橋の東西南北のたもとにも、
当時の由来を語る記念碑などもあって楽しいです。

江戸時代に故郷の藩からはじめて江戸に来た武士になりきって、
お江戸見学と洒落こむにはお薦めのコースになっております。
三越本店と三井本館の間から富士山が見えるかもしれないですよ。
(心の目で見てください。)