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弟子も読者も喜ぶ、北斎さんの大得意な「三ツワリの法」

北斎さんの
着目点の面白さと計算された構図に毎度驚かされます。
そして登場人物たちがまたいいんですよね。
ジワジワ味わい深い、あの人この人。

ささ、今回も楽しい『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』へ
金沢ぶん子と一緒に出かけましょう!

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はい、カエルです!

江東区の小名木川に、今も架かる万年橋。
鉄骨の欄干がアーチ型なのは、
往時の美しい姿を意識してのことでしょうか。


(北斎 富嶽三十六景「深川万年橋」)

小名木川は家康公の命で作られた人工の運河で、
行徳の塩田までをショートカットするための塩の道でした。
後には利根川、江戸川を利用する内川廻しの
船運の一環として重要な役割を果たしました。

荷船の航行の妨げにならないように、
小名木川に架かる橋は高いアーチになっているのです。
浮世絵のモチーフに選ばれる美しい姿には、
機能的な必然性もあったのですね。

同じく三十六景の「日本橋」ほどではありませんが、
万年橋の上もなかなかの人出です。
橋をこの絵の左側に渡った先には、
当時の大人気観光地だった富岡八幡宮がありますものね。
お目当ては門前に広がる、辰巳の繁華街なのかもしれませんけど。

「日本橋」といえば、この二つの絵は構図がそっくりです。


(北斎 富嶽三十六景「日本橋」)
「日本橋」は橋のちょっと上から、通行人の頭越しに日本橋川、
外堀、千代田城ときて画面左側に富士山という構図。

一方「深川万年橋下」の目線は橋の下、船上から描いています。
小名木川の先には隅田川、その向こう岸は浜町の大名屋敷と
お城の代わりの火の見櫓、画面左側には富士山。

ね、そっくりです。

「日本橋」は川の奥に消失点のある遠近法が、
分かりやすく使われていました。
「深川万年橋下」はもっと分かりやすく、
全国に散らばる北斎のお弟子さんたちにとって
素晴らしい絵手本になっています。

北斎は絵手本「略画早指南」の中で、
「規矩の二つをもって諸々の画なすの定位を教ふ」と言っています。
また「北斎漫画」の中で「三ツワリの法」という
独自の構図法を紹介しています。

その教え通り「深川万年橋下」では、
規矩(きく)つまりコンパスと定規を使って、
まず画面を縦横ともに3等分します。

次に「二ツを天とすべし、一ツを地とすべし」の「三ツワリの法」に従い、
下三分の一に川を置き、上の二ツを空に当てます。

画面の縦の長さを半径として、
上三分の一と横幅の二分の一の交点を頂点とする弧を
コンパスで描き、2本の橋げたを縦の三等分線に合わせて建てる。

このように構図だけなら、誰でも簡単に模写できそうでしょ。
素晴らしいお手本だと思います。
後は仕上げに、
浮世の人々を生き生きと配置すれば、楽しい万年橋の風景の出来上がり。

当時、お江戸では、無数に張り巡らされた堀での魚釣りが
大ブームだったそうで、特にここ深川木場あたりは
「タナゴ釣り」が盛んだったといいます。
60センチほどの短い竿を携帯し、仕事の合間に隙を見つけては釣りに興じる。


荷船の船頭さんたち、岸辺の御仁もみんな釣りしていますものね。
橋の上にもそれを見物する人が。

ねぇ、船の人、引いてるよ。

早く釣り上げておくれよ、こっちも暇じゃねえんだから。

十分暇です。

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カエルの旅、次回もお楽しみに!!