登場人物のほとんどが背中を向けていますが、
目を細め、笑顔で富士を眺めているのが想像できますね。
まるで自分もさざえ堂に上がって
富士山を眺めているよう、あぁいい気持ちだこと。
さぁ皆様、
『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』へ参りましょう!
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お江戸見物で深川の八幡様まで来たら、
ぜひとも足を延ばしたいのがここ「五百羅漢寺」と「さざえ堂」です。
小名木川沿いを東へ進むと下屋敷や町家の途切れたあたりから
右手に広重の「深川洲崎十万坪」で描かれた広漠とした埋め立て地が現れます。
そして左手に見えてくる高層のお堂が目的地のさざえ堂です。
というのは、江戸時代のお話し。
現在では、都営新宿線の西大島駅を降りたところに「五百羅漢跡」という標柱が残るのみで、
五百羅漢寺は羅漢様たちとともに目黒の方に移ってしまいました。
五百羅漢寺には当時、ご本尊の釈迦如来像と536体の羅漢像が安置されていました。
羅漢とは、お釈迦様の弟子のうちの悟りを極めた高僧で
一人ずつ皆違うお顔をしています。
座像なのですが、座高が90cm位なのでほぼ等身大。
それらが本堂を中心に、左右に長く突き出したお堂に
ズラーッと並んでいたというから、ありがたくも、
ちょっと恐ろしい光景だったのではないでしょうか。
五百羅漢を見た後は同じ敷地内に建てられたこれまた珍しい「さざえ堂」に登ります。
さざえ堂は三層からなる建物で、内部がらせん構造をしていたそうなのです。
上りと下りの階段が交差することなく、堂内を廻ることができました。
中には観音像が100体。
百観音の霊場巡りが一度にできてしまうという、何ともお得な施設なのでした。
それにしても、五百羅漢と百観音、
いっぺんに600体も拝んじゃおうと言うのだから、すごいお寺です。
どれだけご利益があるものなんでしょうかね。
さざえ堂の3階には展望テラスがあり、これも人気の理由でした。
当時としてはかなりの高層建築で、眺望は抜群。
南には海の向こうの房総から品川沖、東を向けば筑波山、もちろん富士山もよく見えました。
富士山の右には、木場の材木が林立していますね。
展望テラスには、今日も大勢の見物客がいます。
右の座っている二人は、ご夫婦で巡礼の旅をしているのでしょうか。
あちこち回らなくても、このお寺だけでだいぶ数が稼げましたね。
その隣は、オシャレな羽織を着た若旦那風の御仁。
普段、肉体労働なんかしないからでしょうね、
階段がきつかったと見えて、しきりに汗を拭っています。
反対に左端の小僧さんは、足の筋肉がムキムキで階段なんかへっちゃらという感じ。
お使いの途中で寄り道なのか、富士山を指差してはしゃいでいます。
脇差しの男性は、江戸見物に来たお上りさんかな。
江戸は怖い所だと聞いて、市内観光にも道中差しを手放せないとか?
お子さん連れのマダムは、丸髷で前帯。
当時の妻女のよそ行きファッションです。
あんたぁ見て、富士山、きれいねぇ。
何言ってやがる、おまえの方がきれいだよ。
はいはい、どうぞ勝手に盛り上がっちゃってください。
そうそう、お堂の軒に鳩が巣を作っていますよ。
北斎さん、芸が細かいです。
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カエルの旅、次回もどうぞお楽しみに!