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構図の妙と、登場人物たちのノンビリ感がたまらん!

今回も北斎さんの構図の妙に
「オォ〜!」と雄たけびが!!

まったくホントに、
北斎さんの構図はオモシロイ!!

さぁ、
「アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅」へ、ご一緒に!

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葛飾北斎 富嶽三十六景「甲州三島越(こうしゅう みしまごえ)」

三島は伊豆半島の付け根にある静岡県の都市です。

三島大社の前で東西に走る東海道と、南の伊豆に向かう下田街道、
北は甲州への鎌倉街道が交差している交通の要衝です。

この絵は、その三島からの鎌倉街道沿い、
甲斐と駿河の国境にある籠坂峠からの
富士山を描いたものだと言われています。

ドドーンと真ん中に大木がそびえ立ち、画面を二分しています。
幹の左側が、紙の横幅の等分線に一致します。
そして、紙の右上からの斜め二等分線が、
富士山の左の稜線に重なっていますね。

斬新です。
画面を縦に、斜めに分断するかのようなこの大胆な構図は、
素人が下手にマネすると火傷するやつですよ。

大胆過ぎる構図が破綻しないように、
北斎先生は細かいところで工夫していらっしゃいます。

富士にかかる雲を見てみましょう。
山頂部、左、右の三か所に配置してバランスを取っていますが、
それだけではない。

それぞれの雲の塊に対応して、緑の草木が同じような形と
ボリュームで配されているのがお分かりでしょうか。

(↑富士山の左側にある雲)

(↑その雲の下に配置された緑の草木)

左右の雲の下には、それぞれ相似形の茂みがあります。

(↑富士山の右側にある雲)

(↑その雲の下に配置された緑の草木)

山頂部は、濃く摺られた藍色と右に流れた雲の尻尾ごと、
ぐるっと回転させると、天ぼかしの藍色と杉の枝葉、
雲のしっぽには左に伸びた枝が対応しています。

(↑山頂部にかかる雲)

(↑雲の形をぐるっと回転させたような枝葉)

つまり遠くの富士山と、目の前の杉の木を
さりげなく調和させているのです。
足元や頭に雲を纏う富士山と、緑を纏う大木をまさかの同一化。
驚きのアイディアです。

誰も思いつかないようなことをする北斎先生。
だから、見た人みんなが「うへぇ」とびっくり、
わくわくするような絵になるのでしょう。

ちなみに、「北斎漫画」の七編には
同タイトルの「甲州三島越」が描かれています。
開けた山道に牛を連れた農夫が歩く図で、
空には三十六景の三島越と同じような表現の夏雲が描かれています。
しかし、このスケッチには大木がありません。
一方、同じく「北斎漫画」の七編には
「甲州矢立の杉」という巨木の絵があります。

大人が何人も掛かって抱えきれないような木となると、
樹齢何百年だの、どこぞの武将が矢を射ったのと曰くが付くものですが、
実際の籠坂峠やその周辺ではトンと聞きません。

どうやら、いつものように北斎さん、
面白い絵のためにやっちまったようですね。
同じ甲州の風景だし、この方が絵になるし、ってことで
「三島越」に「矢立の杉」を合成したのではないかとは、もっぱらの噂です。

しかも、この太い幹がうまい具合に宝永火山の出っ張りを隠しているのだから、
これはもう確信犯ですね。

それにつけても、相変わらず登場人物たちは楽しそう。

どうだい、そっち、手ぇ届いたかい?
全然だめぇ、長屋の連中みんな連れて来ねぇと無理ぃー
どうも、大袈裟だねぇ

キセルで一服中のジモティーは、呆れ顔です。

旅のしは、どういでか皆、あんなだっちもねぇこと、するだよねぇ

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カエルの旅、次回もお楽しみに!!