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天上世界のように描いた、画狂老人 北斎の心を推理

今回は、心がシーンと落ち着く静かな世界ですよ。

さぁ、みなさま、

『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』へ参りましょう。

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北斎 富嶽三十六景「相州箱根湖水

人の姿も動くものもない、山の中の静謐な湖水の風景です。
描かれている湖は芦ノ湖、
富士山にかかる左の低い山は三国山、
右の大きいのが駒ケ岳です。

駒ケ岳の奥には神山があって、
古代からある山岳信仰では文字通り、
山自体が御神体としてあがめられていました。

奈良時代には、万巻上人という僧がここにやって来て、
「金剛王院東福寺」「箱根神社」「九頭龍神社」などを興したそうです。

(芦ノ湖/画像引用 wikipediaより)

昔は、神様も仏様も仲良く一緒くたでしたから、
芦ノ湖の東側の湖畔には、神社の社や寺院のお堂などの
宗教施設がたくさん建っていたようです。

なぜ、カエルが神社の縁起なんぞを調べたのかというと、
この絵に描かれた建物はなんだろうと、疑問を抱いたからなのです。
中ほどの一棟は箱根神社だと言われているようなのですが、
はたして本当にそうなのでしょうか。

箱根神社はカエルも行ったことがありますけど、湖畔にはなかった。
湖岸の有名な鳥居も近年になって建てられたものらしいし、
お社などの建物は奥まった森の中にありました。

しかもこれ、どう見ても瓦屋根です。

確認のためにも、やはり先ずはロケ地を探しましょう。

前景に木の梢が描かれていることからも、高台から描いたことが分かる。
関所から西に行くと三国山が富士山にかかりすぎて構図と違ってしまう。
江戸の当時、関所の見張り場と屏風山は立ち入り禁止だった。

以上の条件で絞っていくと、残った候補地は塔ヶ島ではないかと思います。
今は、恩賜箱根公園に整備されているところです。
しかも弁天鼻からの眺めがピッタリ一致しました。
「相州箱根湖水」と現在の様子を比べてみると、
おおよそですが、手前の瓦屋根の位置には「山のホテル」、
中ほどの出っ張りには「箱根プリンスホテル」(ザ・プリンス箱根芦ノ湖)が眺められます。
箱根神社はもっと右を向かないと見えません。

で、最初の縁起が出てくるわけです。

この絵の描かれた時代、箱根神社と九頭龍神社の間には、
金剛王院東福寺の堂、塔、伽藍や僧房などが建っていて、
それを描いたのではないかと、カエルは考えました。

明治維新までは仏教色の濃かった霊場だったが、
神仏分離令が出てお堂などが打ち壊され、
廃寺になったとの記録は確かに残っています。

箱根神社と言われているのは、たぶんお寺の鐘楼か何かだわ。
ほら、鐘の音が聞こえてこない?

コホン。
あくまでも、妄想癖のある素人の推理ですので、
どうかツッコまないでやってください。

ともかく、芦ノ湖とカルデラの外輪山、
箱根全体が霊場だったのは事実。
今のような観光地ではなく、
険しい山道の先に開けた聖地だったのでしょうね。

鬱蒼と茂る木々の間に、香のかおりが漂い、
声明のユニゾンが湖面に響き渡る。
朝夕には鐘の音が四方の峰々にこだまする。

北斎は芦ノ湖のほとりに立った時、まるで天上世界のような、
荘厳な雰囲気を感じ取ったのではないでしょうか。

その印象が、神秘的なすやり霞の漂うこの美しい一枚となったのだと、
カエルは一人納得したのでありました。

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カエルの旅、次回もお楽しみに!