岩下書店 | 復刻版浮世絵木版画専門店
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口はたいそう悪いが、美人おっかさんの登場だ!

女性の細やかな表情や仕草を描いたら
右に出る者がいない喜多川歌麿。

そんな歌麿さんの美人画を
北斎・富嶽三十六景の解説で評判の
アート大好きカエル女史が
わかりやすく楽しく解説します。

題して
『アート大好きカエル女史がナビする
カナブン流、歌麿美人画の旅』

さぁご一緒に!

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喜多川歌麿 歌麿名作拾遺集 『咲分け言葉の花 かかあ』

歌麿の数あるシリーズものの一つ、
「咲分け言葉の花」シリーズは
十枚揃いで刊行されたものと思われます。

「かかあ」、「おかみさん」、「おちゃっぴい」など
長屋のお母さんやら、いいとこの奥様、
きゃぴきゃぴした町娘といった
あらゆる階層や年齢の美人をモデルにしています。

「言葉の花」というように、モデルになった美人さんたちは
当時の話し言葉で好き勝手なことをしゃべっていて
とっても楽しいシリーズです。

さて、この「かかあ」は子どもにお乳をあげながら
何をしゃべっているのでしょう。

まからざぁ まからねぇでいいわな
しろ物は こんだの お銭はこっちのもんだ
それになんだ あたぢけねぇ(けち、しみったれ) あたぢけねぇもすさまじい
これ三文が汁の身を買っても お得意の旦那様だ ごもってえねえ
うちへけえって 口の曲がらねえように ほうぺたへ
しんし(伸子、洗い張りの尖った棒)でも打っておかっせ
そうとう売りっぷりの悪いあきんどだ 好かねえ

分かりやすいように漢字交じりにしてみました。

何というか、すごいですね。
きっぷがいいというんですか
これぞ江戸っ子って感じの口調ですね。
落語を聞いているようで、実に面白い。

棒手振りの態度が気に入らなかったのでしょうか。
お汁の身、貝か青菜かを値切ったら、
しみったれたこと言うな、とか言われたのでしょうか。

火事と喧嘩は江戸の華、なんて言いますから
江戸っ子の皆さん、結構な気の短さだったのかもしれませんね。

絵だけ見ていると麗しき母子像なのだけれど
実はおっかさん、相当文句を言ってました。

口は悪いけど、このおっかさん、きれいですよね。
大きな丸髷の黒髪は豊かで
襟足のおくれ毛が色っぽいし、山葡萄柄の浴衣も趣味が良い。

全体的に青味がかったグレー系で
赤ちゃんの着物と、お母さんの紅と
シリーズ名の書かれたタイトル部分に
赤系を分散させて配置している。

また、分量の多い髪の黒には
左下の帯の黒でバランスを取っている。
計算された色の配置が美しい絵だと思います。

タイトルの囲みの中には、
一作品ごとに違うお花の絵がデザインされています。
菊や牡丹や水仙など、
描かれた女性のイメージに合わせて選んだのでしょう。

「かかあ」の花は「あざみ」。
とげとげの葉っぱに紫のきれいな花をつける
野に咲くたくましい植物です。
美人だけど口の悪い、タフなおっかさんにはピッタリの花です。

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次回もお楽しみに!