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兄嫁と小姑の闘いをバブーで仕切る幼子か

みなさま、大変ご無沙汰しております。
こんなに間が空いてしまって
みなさまに忘れられてしまっているのではないかしらんと
弱気な気持ちが出たり入ったり。

そんな気持ちを菊様の団扇で扇ぎながら、
ここはひとつ。
爽やかな気分で
再びスタートいたします!

さささ、歌麿さんの作品でございます〜!

喜多川歌麿 「当世子育草」

「節分のまめに育てはおのづから鬼をもひしぐ和子のいたずら」

十返舎一九の狂歌が添えられたこの作品、
蔦屋重三郎が育てた二人の共演です。
感慨深いものを感じてしまうのは私だけでしょうか。

というのも、蔦重、歌麿、一九の三人とも
それぞれ別の作品でお上の怒りに触れ、
御縄につきましたからねぇ。
蔦重は財産没収、歌麿と一九は手鎖五十日。
言論の自由、表現の自由、無かった時代なのですね。

歌麿さんは、お上の規制を逃れるためもあってか、
たんなる美人画ではなく、
子どもを題材にした、「山姥と金太郎シリーズ」などの
母子像も多く描いていました。

歌麿に限らず、江戸中期には「子宝」ものを
多くの浮世絵師が描いています。
平和な世の中になって、武士も町人も「家」の存続が
一大事となり、後継ぎは宝となりました。

疱瘡(天然痘)や麻疹(はしか)などで、
子供の死亡率は高く、「七歳までは神の内」などと
言われた時代ですので、それはそれは大切に
育てられていたのでしょうね。
鬼さえびびるようないたずらをされても、
元気に育ってくれて嬉しいわ、なんて言って、
叱らない親ばかさんを皮肉った歌なのでしょう。

この絵の子どもはどんないたずらをしているのかな。

室内の様子や、女性たちの服装を見ると、
ここは商家の奥座敷でしょうか。
赤ちゃんを抱いているのが母親で、座っているのが
この家の嫁入り前の娘さんでしょうか。
母親は兄嫁で、赤ちゃんは姪っ子になるわけね。

赤ちゃんが持っている団扇には、
歌舞伎役者の瀬川菊之丞が描かれています。
羽織の紋が結綿なので分かります。
この娘さん、お江戸のアイドル菊之丞様のファンなのですね。
それを取られちゃったもんだから、さあ大変。

ちょいと私の菊様返してちょうだいな、
ねえ、お義姉さん、よだれが付いちゃうわよ。

いいじゃないか、おはな坊にちょっとかしてやってよ。

ばぶー。

まあ、鬼をもひしぐってほどのこともないですけど。
お下品でお馴染み、弥次喜多道中の十返舎一九の狂歌も
歌麿さんが描くと、こんなにもお上品で
微笑ましい風景になるのですね。

浮世絵の面白いところは、その当時のファッションや
トレンドがビジュアル化されているところです。
細かいところまで注意して観察すると、
まぁ本当に色々な発見があって楽しいのです。

この時代で丸髷を結っていればママさん世代だし、


つぶし島田に赤い手絡(リボンみたいなやつ)を
つけた髪型は若い町娘のヘアスタイルでした。

菊様団扇や、赤ちゃんの着物の団十郎柄を見れば、
いかに歌舞伎が庶民の間に浸透していたかも分かります。

特に、歌麿さんは着物や髪型など、
細部まで写実した人物像を数多く残してくれました。
江戸時代の人々が何を思って、どんな暮らしをしていたのか、
歌麿さんの絵を見ながら、
今日もカエルは妄想を膨らますのでした。

次回もお楽しみにね!!