こうも暑い日が続きますと
ひんやりクールな雪景色が恋しくなるのは、金沢ぶん子だけではないでしょう。
一面の銀世界、かじかむ手、白い息・・
妄想するだけでも涼しいような、そんな気がするような・・
ハイ、今回の『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』は
皆様に涼感をお送りいたします *・゚゚・*゚:*:✼✿*・゜゚・*☆
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ある日の北斎さん。
目覚めると一面の銀世界。
雪景色を描くなら此処と以前から目をつけていた小石川へ、
画帳と筆を持ってお出掛けです。
北斎さんの生きた時代、1800年前後100年くらいの間は
小氷期と呼ばれ、現代よりもちょっと寒かったそうで、
江戸でも雪が積もることが珍しくなかったということです。
品川で積雪2メートルとか、隅田川が凍結したなんて記録も残っています。
さて、北斎さん。
大好きなコタツから這い出ていざ外に出てみると、
予想以上の大雪に歩きにくいったらありゃしない。
目的地までは船で向かうことにして、柳橋から屋根船を仕立てます。
蓑笠で支度した船頭さん、刺すような川面の寒さに愚痴もこぼれます。
今日は朝から雪見の客で大忙しでさぁ。
商売繁盛で文句はねえけど、こう寒くっちゃかなわねえ。
まったく、雪なんかに喜ぶのは風流人と犬っころだけでぃ。
花見や月見、虫聞きと四季折々に
楽しみを見つけた江戸っ子は、雪見もまた好みました。
屋根船に炬燵を設えて、一杯やりつつ雪見船と洒落てみたり、
料理茶屋で芸者をあげて雪の庭を愛でたり、
お金をかけずに高台から雪景色を楽しんだりと風流なことです。
雪見の名所とされたのは、隅田川堤や行人坂、
上野不忍池、目白不動などなど。
北斎さんが向かっている小石川の牛天神社もその一つです。
小石川台地の南端のベロの先っちょに位置し、
南西に遮るもののない高台となっています。
船で神田川をのぼっていくと、右手に見えてきたのは昌平坂。
通学のお武家さんらが急な坂道を慎重に登って行きます。
またしばらく行くと、頭上に水道橋の懸樋(かけひ)が通り、
それをくぐるともう市兵衛河岸に到着です。
降りた河岸は水戸殿の上屋敷、今で言うと後楽園の前あたりです。
そこから台地の上の神社までは結構な高低差があります。
いざさらば雪見に転ぶところまで、ってか。
長い階段だ、転げ落ちたら洒落になんねいな。
足元を気にしながら上まで登り顔を上げると、
北斎さんの目の前には絶景が。
江戸川の彼方には家並みの屋根と同じく、すっぽりと雪を被った富士山が
いつもより高い空を背景にすっくと立ち上がっています。
狙い通りの、いやそれ以上の富士山と江戸の雪景色に大満足で筆を運びました。
西側の開けた崖に立ち並んだ茶店の2階席には、朝から粋人の雪見客の姿。
富士の絶景を楽しんでいると、店の娘が空を指差して叫びます。
あっ、UFO!
なんだいゆーほーって、ありゃ富坂のトンビだよ。
この物語はフィクションです。
登場する場所、交通手段などが実際に利用されたかどうかは分かりません。
カエルの妄想です。
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カエルの旅、次回もどうぞお楽しみに!