岩下書店 | 復刻版浮世絵木版画専門店
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富士のたもとで人間模様、北斎劇場のはじまり、はじまりぃ

あぁ今回も面白い!
北斎さんの絵は景色だけではなく、登場人物の表情、仕草も必見です!

さぁ皆様、
『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』へ参りましょう〜!

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富嶽三十六景シリーズ中、愛知県からの作品は2図あります。
「尾州不二見原」と「東海道吉田」です。

しかし、残念なことに「尾州不二見原」に描かれた富士山は、
近年、南アルプスの山を見間違えたものだと判明してしまいました。
名古屋からは地理的に、富士山は見えないのだそうです。

でもご安心ください。

「東海道吉田」の富士見茶屋から見えている富士山は大丈夫、本物です。
吉田宿、豊橋市からは現在でも、頭の先っちょだけでなく、
もう少し下の方までばっちり見えます。


北斎 富嶽三十六景「東海道吉田」

東海道の吉田宿といえば、
続く「御油」赤坂」と並んで街道イチの繁華街でした。
飯盛女というサービス業のお姐さん方が多い
男衆のパラダイスだったようです。

そんな背景も意識してか、三十六景シリーズには珍しく、
美女3人が全面にフューチャーされています。

「従千住花街眺望ノ不二」でも吉原の遊女をそのまま描かずに、
花街の手前の田んぼにいる農婦をそれに見立てているようでした。
この絵も吉田宿の雰囲気を、
ポージングを決めた美女たちに、託しているのではないでしょうか。

さて、登場人物たちを少し観察してみましょう。

女性の旅装束はホコリ除けが肝要。
頭には手拭いで姉さん被り、着物の塵除けには上から浴衣を
羽織って腰ひもで留めていたそうです。
後ろ姿美人に見返り美人、何ともアダルトな魅力のお姐さま方です。


茶屋の娘さんは赤い髪飾りで十代とわかります。
袖口からのぞかせた赤の襦袢とコーディネート。
フリルの半衿も可愛らしい、いかにもな若者ファッション。
さすがに東海道一の繁華街だけあって、
なかなかのオシャレ店員さんです。

その娘さんをニヤニヤしながら眺めている二人も
男衆代表として抜擢されたように見えます。
手前の人の服装は特徴がありますね。
紺の胸当てには白で問屋の紋が染め抜かれています。
隣には三度笠が二つに大きな荷物。
どうやら彼は馬で荷を運ぶ、定飛脚の宰領(さいりょう)のようです。
表に馬を休ませ、宰領さんも一服ですか。
紋が「壽」、笠には「永」と「山に三つ巴」の印は、
版元の「西村屋永寿堂」の広告です。


後は、おそらく美女二人を乗せてきた駕籠屋さんですが、
草鞋を叩いて柔らかくしていますね。

おニューの草鞋がチクチクして、歩きにくいのかもしれません。
何だか北斎さんの絵の中の駕籠かきには、いつも和まされます。

7人の様々な立場の人物が、表情豊かに描写されており、
また江戸時代の旅の風俗が色々描かれていて、興味深い作品だと思います。
絶妙に配置されたキャストを見ると、
茶屋も舞台のセットのように見えてきませんか。
今にも東海道中膝栗毛のようなドタバタ劇が始まりそうな
生き生きとした人物群です。

舞台といえば、美女二人が座っている特等席は
まるで歌舞伎小屋の桟敷席みたいですね。
左手から花道に登場してきたのが、千両役者の富士山ってわけです。

よっ、待ってました!日本一!

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カエルの旅、次回もどうぞお楽しみに!