北斎さんがこの世にいたら
今日はどのあたりにスケッチに出かけているんでしょう?
今日の関東は雨降りなので、
朝からずっと家にこもって絵を描いているかもしれませんね。
さぁ皆様、
『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』へ参りましょう!
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富嶽三十六景は好評につき、
10図追加され、全部で46枚のシリーズです。
追加された10図は俗に「裏富士」などと呼ばれます。
裏富士の特徴は、輪郭線が墨で摺られているため、
はっきりくっきりしていることと、
描き込みが細かくて職人さん泣かせなことです。
「本所立川」はその10図の中の一枚。
彫師さん、やっぱり大変そうです。
薪の山の一本一本の描写や、大量の材木の細い直線など見ると
とても根気のいる作業かと思われます。
見る方としては、見どころ満載で楽しいんですけどね、裏富士。
さて、先ずはロケ地を確認して行きましょう。
本所を東西に流れる運河、竪川(たてかわ)の
北岸にある木場を描いたものです。
相生町あたり、隅田川よりの河岸に材木商が多かったようです。
今で言うと、墨田区両国の竪川沿いになります。
北斎さんは、墨田区内で長屋を変えながら
引っ越しして回っていた方なので、
この木場は日常の見慣れた風景だったことでしょう。
この絵の中の富士山は端っこにあって、
しかも前の材木が邪魔で見えにくいですね。
むしろ主役は三人の職人さんたちのようです。
左から見ていくと、うずたかく積まれた薪の山に
手を広げて薪を受け取ろうとしている人がいます。
効率よく二本同時に投げているようですが、
これもまた熟練の技、コンビの息もぴったりと言った感じです。
ん?
この2人、前にもどこかで見たような。
と思ったら「江都駿河町三井見世略図」の屋根職人と同じポーズです。
漆喰を藁にくるんだものを上の人に投げ上げていました。
投げたものが空中に止まっていて、
瞬間をカメラで撮ったようで、えらく感心したので覚えていたのですが
北斎さんも気に入っていたのでしょうね。
瞬間を切り取ることで、これほどの躍動感を表現できるとは、本当にびっくり。
北斎先生、天才!
次は絵の中央でのこぎりを挽く人、木挽(こびき)の職人さんです。
丸太から大鋸(おおが)という巨大なのこぎり一丁で
柱や板に切り出すのがお仕事。
今なら製材所の電動のこぎりでギュイーンとやっちゃう作業も
昔は当然、手作業なわけで。
火事の多かった江戸の町では、引っ張りだこの人気の職業だったのでしょうね。
薪の山の上から下へ、木挽職人の切っている材へ、
そしてその木材の傾斜を延長していくと、富士山の稜線に繋がっていく。
左から右へ、上から下、また上へと
見る者の視線を本来の主役である富士山へと誘導していく。
そんな北斎のたくらみを感じる構図ではないかと思うのです。
そして、カエルは見つけてしまいました。
真ん中下方の斜めに立てかけられた材と
木挽きの材とで描くV字型が、相似の逆さ富士となっているということを。
フッフッフ、見切りやしたぜ、北斎の旦那。
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カエルの旅、次回もどうぞお楽しみに!