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北斎さんの大人気作品「甲州 石班澤」の謎解き

漢字遊び?
はたまた、
漢字の間違い探し?

まるで北斎さんワールドと
芸術家カエルの知恵くらべでありながら、
北斎さんの心のつぶやきが聞こえてくる・・・
そんなドキドキわくわくする展開ですよ。

途中に登場する
富士山の写真も楽しんでくださいね!

さぁ、

『アート大好き青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅』へ、ご一緒に!

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北斎 富嶽三十六景「甲州 石班澤(こうしゅう かじかざわ)

カエルです。

「石班澤」と書いて「かじかざわ」と読む。
いや、本当は読まない。

「カジカ」は、ハゼみたいな淡水魚の総称で、
辞書で調べると「鰍」「鮖」「杜父魚」と書きます。
現に今の地名は「鰍沢」です。

ならば、「石班」とは何ぞと思い調べると、
どうやら「石斑」の書き間違いらしいのでした。
(えぇ、また!?)

同じ辞書によると、「石斑魚」あるいは「鯎」と書いて
「ウグイ」という鮎みたいな形の魚がいる模様です。

いやいや、ウグイではなくカジカですから、と思いさらに調べると、
江戸時代の百科辞典「和漢三才図絵」に答えがありました。

「石伏」「石斑魚」「鮖」で
「いしぶし」「いしふし」と読んでカジカの仲間のこと。

玉石の多い川の底でじっとしているので「石伏」で、
石のようなまだら模様から「石斑」の字を当てたのかもしれません。
ウグイの方は「鯎」「宇久比」と書いたのですって。

つまり「石班」は「石斑」で、
「石斑魚」は、今はウグイで昔はカジカだった。

「石斑魚沢」と書いて「かじかざわ」と読ませるところを、
一字間違えて一字落として「石班澤」になっている、
ということのようですね。

ややこしい!!
普通に「鰍沢」でよかったのに、
と誰にともなく愚痴るカエルです。
細かいことが気になってしまう、悪い癖が出てしまいました。

藍摺り10枚のうちのひとつ、
富士川の急流と揺るがぬ富士の狭間で、
投網漁をする親子の日常を描いた作品です。

お父さんを中心に、彼の手繰る投網と川に突き出た岩場の斜面とで、
はいっ!
富士山の相似形です。

静と動の対照的な二つの富士が、
中間の余白を挟んでくっきりと浮かび上がる、
シンプルが故の美しい構図です。

この漁師さんが富士山を擬人化したものだと思うと、
投網漁も何だか崇高な行為のようにも見えてきます。

ん? お父さんが富士山の相似形だとするとこれはもしや?
「子抱き富士」だったりして、とふと思いました。

精進湖から富士を見ると、
側火山の一つである大室山が手前にひょこっと鎮座して、
まるで富士山が子供の山を抱いているように
見えることから「子抱き富士」と呼ばれています。


↑ 精進湖の向こうに大室山を抱っこした「子抱き富士」
※画像は「富士五湖ぐるっとつながるガイド/富士山巡礼の旅」
一般社団法人 富士五湖観光連盟様より引用させていただきました。ありがとうございました!
www.mt-fuji.gr.jp

そして精進湖のお隣の本栖湖から子抱き富士を見たところが、
左の稜線の足元に大室山があるという、
この絵の子供が座っている位置とシンクロするのです。


もともと鰍沢は甲府盆地にあって、
御坂山地や天子山塊に遮られ富士山は頭の先っちょしか見えません。
その山なみを描かずに、霞で隠しているのがこの絵の構図です。

もしその山地がなければ、
富士の北西、本栖湖の延長線上にある鰍沢からは、
子抱き富士がこの絵のように見えるはず。

もしかしたら北斎は、富士の見え方がいまいちのこの地で、
見えないものを描いたのかもしれません。

わっかるかなぁ~、わっかんねぇだろうなぁ~、
とか面白がりながらね。

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カエルの旅、次回もお楽しみに!!