金沢文庫 | 復刻版浮世絵木版画専門店
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紙を舞い上がらせて風を見せるとは、北斎さんのニヤリが見えるってもんだ

ブルブルブル
寒い寒い!!

絵の中の皆さんは
寒さだけじゃなくって、
大変なことになっちゃってます!

さささ、
アート大好きカエル女史がナビする
「青野カエル的解釈の北斎・富嶽三十六景の旅」へ、ご一緒に!

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葛飾北斎 富嶽三十六景「駿州江尻(すんしゅうえじり)」

江尻は東海道五十三次の18番目の宿、
現在の静岡市清水区です。
この絵の場所は、江尻宿を過ぎて巴川を渡り、
次の府中宿までの街道沿いなのでしょう。

この道のカーブを見ると、
狐ヶ崎駅前の上原堤という農業用のため
池の縁に沿った東海道が候補に挙がりますぞ。

中央の小さな祠が何かわかれば、
場所の特定はできそうですが。
追分近くの姥ケ池の祠だという説もあるようです。

いずれにせよ、これはいわゆる名所絵ではなくて、
「風」を描きたかった作品なのだと思います。

「神奈川沖浪裏」が「波」を描いた絵であるのと
同じモチベーションを感じます。

富嶽三十六景のシリーズは、
江戸っ子のアイデンティティーとも言える富士山を
時に美しく壮大に、
時に身近な親しみやすい存在として描いたものです。

北斎は様々なアイディアを振り絞り、
構図に工夫を凝らし、
ユニークな登場人物を添えるなどして、
手に取る人たちを飽きさせませんでした。

「駿州江尻」が絵草子屋の店先に並んだ時も、
江戸っ子の皆さん、
結構びっくりしたのではないかと思いますよ。

写真のないこの時代に、
まばたきでシャッターを切ったかのように
瞬間を捉えています。
目に見えない「風」をこんなに
ハッキリと描いて見せたのは、
北斎が初めてだったはず。

北斎自身、たくさんの紙を舞い上がらせることで
風を表現するこのアイディアを思いついたときは、
さぞかし嬉しかったことでしょう。

富嶽シリーズ後に出版された、
「北斎漫画」の12編や15編にも
紙を使った風の絵を載せています。
12編の9〜10丁の風の絵などは、
他にも菅笠がおちょこになっちゃったお坊さんや、
パンチラならぬフンドシちらりになった人など、
楽しんで描いています。

「駿州江尻」の風は、頭巾の人の懐紙を追えば一目瞭然、
左下から右上に画面を二等分する線上に吹いています。
富士山の位置からすると、北西の風です。

笠を飛ばされた人は、頭に丸輪だけが残っていて
面白い感じになっちゃってます。

主役の富士山も雲行きの怪しい中、
頼りなげにかすんで見えます。

右の稜線の足元には愛鷹山。
線一本で描かれた稜線が細い紐のようで、
愛鷹山も木に引っかかった紺色の布が風に
たなびいているみたいに見えてきます。

画面上端の墨の一文字ぼかしは、
この北西からの突風が
嵐の前触れであることを予感させています。

自然の驚異の前に人間も富士山も、
一緒になって耐え忍んでいるようで面白いです。

府中宿まではまだ結構、距離がありますよ。
どうか皆さん、道中お気を付けてくださいね。

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カエルの旅、次回もどうぞお楽しみにね!