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カエルの江戸リポート〜浮世絵制作の現場編〜

今回もアート大好き青野カエルさんが
タイムマシーンに乗って
ちょいと江戸まで現地取材に行って来てくれやした。

では、リポートをお送りします!

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北斎や写楽など当時から大人気で、
現代でもなお世界中の人々から愛されている絵師は大勢います。

しかし浮世絵は絵師だけでなく、
彫師、摺師という職人とそれを束ねるプロデューサーである
版元というチームで完成させる、総合芸術なのです。

では、実際どのようにして浮世絵は作られたのでしょうか。

まず版元の地本問屋(じほんといや)。


(地本問屋 長谷川雪旦画/Wikipediaより引用)

今で言う出版社で、蔦屋重三郎の「耕書堂」などが有名ですね。
江戸っ子の今のニーズに合った商品を企画し、絵師に注文を出します。
たとえば、喜多川歌麿に江戸で評判の三美人の大首絵を描かせよう!とか。

絵師が版下絵という墨書きの原画を描き上げます。
版元のOKがでれば、版下絵は彫りの工房に持ち込まれます。

(彫師:松田俊蔵さん)
彫師は山桜の版木に版下絵を裏返しに貼り付けて、
墨の部分だけを残して彫ります。
これを主版(おもはん)といいます。

版下絵は、髪の生え際や着物の柄などの細かいところまで描きこみません。
そこは彫師の技術に丸投げというのが普通だったらしいです。

一番難しい髪の毛や顔の部分は、頭彫り(かしらぼり)といって
親方クラスのベテランにしか出来なかったそうです。
1ミリに3~4本の髪の毛を彫り込む、超絶技巧は「毛割(けわり)」といいます。

さて次に、
主版を墨一色で、出したい色の数だけ摺ります。
これを校合摺り(きょうごうずり)といいます。

校合摺りを絵師の元へ戻し、色の指定(色さし)をしてもらったら、
指定された色の数だけ板を彫ります。これが色版(いろはん)です。

浮世絵は皆にできるだけ安く提供できるように、
色数を抑えてコスト削減に努めていたので、
色版は板の両面に彫り、
使うのは4~5枚、8~10色程度に抑えられました。

版が出来たらいよいよ摺りに入ります。
刷毛で着色した版木に和紙を置き、
上から馬連(ばれん)でこすって摺り上げます。

絵師立ち合いのもと、色やぼかしの調整をしながら
何度も試し摺りをして、良しとなれば本摺りです。

彫師は「頭彫り」が師匠、「胴彫り」といってその他の部分や、
周りをきれいに整える「さらい」や文字専門の人など分業していました。

しかし摺師は、一枚の絵を最初から最後まで一人で仕上げていたそうです。
一つの浮世絵は初回に200枚摺るのが普通で、
それを初摺(しょずり)といいます。
人気が出てたくさん売れれば後から追加で摺るのですが、
この時は絵師の立ち合いはなく摺師の技量に任されます。
これを後摺(あとずり、のちずり)といいます。

(摺師:佐藤景三さん/佐藤木版画工房代表)

摺師は「ぼかし」「から摺り」「地潰し」など
様々な技とセンスがものを言う仕事で、
馬連だけあれば腕一本で生きて行けるなんていう世界だったそうです。
江戸っ子らしくてカッコいい!

絵師の技量だけでなく、
版元の手腕と職人技があって初めて成立するのが、
浮世絵という日本独特の芸術であり、文化なのですね。