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ギミックいっぱいの相州仲原

みなさま、お待たせ!(すごいフレンドリーでごめんなさい(≧ω≦))
だって今回もアート大好き青野カエル女史の解釈が
めっちゃ面白いんですもの(๑˃́ꇴ˂̀๑)
いやぁほんとにね、この解釈を読んでから絵を見るとものすごく面白い。
登場人物の一人一人をじっくり見ていたくなるし、
全体を眺めては「なるほど〜!」とワクワクして、誰かに話したくなる。
そんなものですから、はしゃぎながらのはじまりはじまり〜!

葛飾北斎 富嶽三十六景 「相州仲原(そうしゅうなかはら)」

輪郭線が墨摺りの裏富士十図のうちのひとつです。

相州は相模の国、今の神奈川県。
仲原は平塚市中原を指しているものと思われます。

この絵でまず、注目したいのはお約束の三角の相似です。
奥から順に、富士山手前の緑の山、

風呂敷包みの永寿堂の三つ巴の上に山型、

雀おどしの鳴子が下がった紐が山型に、

一番手前には藁葺の屋根の三角。

今回は相似形の大サービスですよ!

次に、この絵に登場する人物たちを詳しく見てみましょう。

左から、谷川堀でしょうか、水路に入って何かを取っている人。

赤ちゃんをおぶって鍬にやかんを引掛け、頭に盥を乗せたタフなおっかさん。
この二人はジモティーですね。

天秤棒の人は一体何を売っているのでしょう。
手に持っている物も謎です。
謎の棒手振り、気になります。

手前の親子連れは観音巡礼でしょうか。
すぐ近くの金目観音に向かっているのかもしれません。

立ち姿が役者っぽい修験者風の男は、大山講の御師でしょうか。
橋のところに立っている不動明王の大山道標を
見ているように描いているのは、それを示唆しているのかと。

最後に、富士山を仰ぎ見る、傘を背負った商人風の男。
大きな風呂敷包みには、版元の西村永寿堂のマークを
入れてさり気なく宣伝しています。

大山詣りや坂東三十三観音巡礼などの信仰の道であり、
相模、武蔵と江戸を結ぶ物流の道でもあった中原街道を
分かりやすく説明するための見事なキャスティングです。

もう一点、人物たちの足元にご注目。
おっかさん、巡礼親子、永寿堂の宣伝マン。
こちらに背を向けた四人の足元が同じポーズですよ。

そして、御師と棒手振り。
こちらを向いている二人の足元も似た形です。

先生お得意の「コピペ」ですね。

魚捕りおじさんの配置にも何かないかと、
ジッと観察していると、見えてきました。

「諸人登山」などでも使われた、「笠の中心点を結んでみよう!」

という手法を試してみたところ、丸印の描かれた笠は二つ。
魚捕りと巡礼親の笠の丸を結んで、
その線を延長しますと、
鳴子の下がった山形の紐の頂点に繋がりました。

また別個、先生お得意の「三ツ割」で、
画面上三分の一に水平の補助線を引き、
富士山の頂点と結んでみてください。
笠の線と富士の左側の線、
この二つの直線は見事に平行線になっています。

このように「相州仲原」は、様々な仕掛けが盛り沢山な、
大変興味深い絵だと思います。

最後に、ロケ地にこだわるカエルは、
富士山の前にある緑の小山は何かを考えてみました。

中原街道は、江戸の虎ノ門から徳川家の別荘があった
中原御殿を結ぶ道で、東海道の内陸側を直線的に通っています。

江戸からは、富士かくしの丹沢山塊に近づきながら南下するので、
富士山は頭の先がちょっとだけ見えている状態が続きます。

丹沢山塊の相模平野における南端に位置するのが大山で、
瀬谷の継立場を過ぎると、大山の左から富士山の左の稜線が見え始めるのです。

さらに進んで、用田の辻あたりに来ると大山は裾野だけになり、
富士山の左右の稜線がきれいに見えてきます。
平塚市中原の近くの北豊田で富士山を見ると、
左裾に金時山、矢倉岳があり、真下に松田山、右に二つの小山があります。

カエルの綿密な調査によって、富士山の前にある緑の小山は、
大山の南裾、弘法山公園の山々だと見当をつけました。

北斎先生の様々なテクニックの詰まった「相州仲原」、とても面白い絵です。

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あぁ面白い。。。
こんなふうに解釈するなんて、北斎さんもびっくりかも!
よくぞ見破ってくれたな!なんてね。